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風の吹くまま気の向くままの生活雑記
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 読了。出てすぐ買った割には手をつけるのが遅くなったけど、読み始めると割と一気。イラストのこときさんとのコンビは鋼鉄三国志のノベライズに引き続きでちょっと嬉しい。

 中世西洋風ファンタジーもので、強大な「恩寵(神との契約によって得られる一種の超能力)」に守られた一族が支配する「帝国」が支配する世界。
 その帝国の北部の僻地に上つ方の政争に巻き込まれた挙句とばっちりで左遷された下っ端役人が主人公。ヤエト(男)36歳 虚弱体質・歴史オタク・隠居志願。
 なので僻地に飛ばされてむしろ願ったりな感じで田舎ライフを満喫していたところ、都から帝国の皇女様が太守としてこの地に赴任してくる。挙句、太守の副官に皇帝じきじきに任じられてしまってさあ大変。更に、先の短そうな皇帝の後継争いにも巻き込まれて、さあ大変、てな感じの話。あ、「俺たちの戦いはこれからだ!」オチじゃなくて、ちゃんと話は片がつきますw;
 
 基本的にキャラ萌え/燃えってよりは、「こういうとこでこういうことがありましたよ」っていうお話重視な感じ。設定含めた世界そのもののうねり感が面白いなー。群像劇というか大河風味というか。主人公の過去見の能力や歴史好き・史官という立場の設定によって何百年遡った話とかが出てくるせいでノベルズ2冊の分量の割にスケール感が大きくて濃い感じ。世界自体の空気が濃いというか。密度の高い「異世界」に行って帰ってきた感じで面白かった! 竜との契約とか、埋もれてしまった過去の断片をつないで、今に蘇らせてどうこうとかのくだりは滾るw
 主人公はやってることはその辺のヒーロー並なのに、やたら死に掛けたり、テンション低かったりのせいか、あまりヒーローっぽくないとこがツボだw そして鳥(馬代わりの大きいのが出てくる)の皆さんがかわいーv
 その他のキャラの皆さんもいろいろと魅力的なのだが、「お話」の方に軸足がある分、描写はあっさりさっぱりな感じかな。フツーのラノベなら主人公は皇女さんで、ばっちり熱い成長モノになるところだろうけど、枯れたあんちゃんが主人公なのでそこまで熱い話にもならず。でも十分に皇女さんの成長とか、北方の帝国への帰属意識の低い人々の変化とか伝わるので、熱くはならないがほっこりする感じ。この人の作品はそういうとこが好きだ。

 ただ、そこはかとなく翻訳FTぽい落ち着いた文体が「帝国」の重さや北の辺境の空気やもろもろを盛り上げる中、時々「軽く死ねる」とか「ありえない」とかの現代っぽい言い回しがひょいと入ってくるのが目に付いた。作者の人の口癖なのか、ラノベっぽいとっつきの良さのための演出なのかなー。
 和物の時代物で「愛してる」とか言われるほどのがっかり感は無いけど気にはなる。


 後書きによると続編の予定もあるらしいので楽しみ。…作者の人の手が遅いなら今絶版中のあれこれを引き取って出しなおしてつなぐとかいかがですか。

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